3月3日のひな祭り
桃の節句が近づくと、ひな人形を飾る準備をしなくては……。
久しぶりに出すと飾り方を忘れちゃった…なんてことも。
上の段はなんとなくわかるけど、下の段の方や、道具になるといまいちよく分からないという人もいるのでは?
今回はよく七段飾りに飾られる「仕丁」やたくさんの「道具」そして地域によって変わる飾り方についても詳しく紹介していきたいと思います。
Table of Contents
ひな人形の飾り方、仕丁編
今回ご紹介する『仕丁』は三段飾りや五段飾りにはほとんど登場しません。
七段飾りになると、随身(右大臣、左大臣)の下5段目に飾られます。
あまり目立たない三人組
七段飾りにならないと、ほぼ登場せず、ひな祭りの歌「うれしいひなまつり」も登場しないこの三人組は『仕丁』と呼ばれています。
読み方は「しちょう」もしくは「じちょう」です。別名「衛士(えじ)」とも言われています。
外出時の従者です。
ひな飾りは男雛(お内裏さま)と女雛(お雛様)の結婚式という設定です。
つまり天皇と皇后の結婚式なので、登場する人物もそれぞれ身分が高かったり、宮中に仕えているものが多い中、唯一庶民出身の設定の三人組なのです。
三人組の表情
三人はよく見ると顔に表情があり、笑い顔、泣き顔、怒り顔になってます。
これらはそれぞれ笑い上戸、泣き上戸、怒り上戸と言われ、三人一組で「三人上戸」と呼ばれています。
仕丁の飾り方
仕丁は七段飾りの五段目に飾ります。
一般的には、右から「立傘(たてがさ)」「沓台(くつだい)」「台傘(だいがさ)」を持った仕丁の順に飾ります。
立傘、沓台、台笠は大名行列を模しているのです。
また京都風のひな飾りでは、右から「箒(ほうき)」「ちり取り」「熊手(くまで)」をもった仕丁の順になります。
こちらは宮中での清掃の役目を模しています。
左近の桜(さこんのさくら)を向かって右に置き、右近の橘(うこんのたちばな)を向かって左に置きます。
・立傘(箒)を持つ仕丁
立傘とは先の細い雨傘のことです。京都風の場合は箒を持っています。
立傘の傘の部分が外側(向かって右側)を向くように両手に柄の部分を持たせます。笑い上戸の仕丁に持たせます。
・沓台(ちりとり)を持つ仕丁
沓台とは履き物を置く台のことです。両手の上に沓台を乗せます。
京都風の場合は仕丁の前に「ちりとり」を置いたり、持たせたりします。泣き上戸の仕丁に持たせます。
・台傘(熊手)を持つ仕丁
台傘とは先の丸まった日傘で、武家が用いた丸まった頭にかぶる笠を竿の先にのせたものです。
笠が外側(向かって左側)を向くように両手に柄の部分を持たせます。
京都風の場合は熊手を持っています。怒り上戸の仕丁に持たせます。
・左近の桜
平安京の内裏にある紫宸殿の正面から見て左にあった桜の木。現在も京都御所内の紫宸殿に植えられています。
一番右の仕丁の右側(外側)に飾ります。
・右近の橘
平安京の内裏にある紫宸殿の正面から見て右にあった橘の木。長寿瑞祥の樹として大切にされたとも言われています。
一番左の仕丁の左側(外側)に飾ります。
以上のように飾るのですが、実はどの人形が何を持つのかは特に決まっていないのです。
地方によっても違うのもありますが、持たせる道具は右から「立傘」「沓台」「台傘」、京風だと「箒」「ちりとり」「熊手」になります。
しかし、それを持つ仕丁は、右から「笑い上戸」「怒り上戸」「泣き上戸」であったり、「泣き」「怒り」「笑い」であったり、「笑い」「泣き」「怒り」だったりと色々あります。
大名行列や雑役夫を模している
一般的に飾られる「立傘」「沓台」「台笠」をもつ仕丁の三人は大名行列を模してると言われています。
また仕丁は平安時代以降、貴族などに使われ雑役に従事していました。
一般庶民からいろいろな理由で宮中にくることになった人々の感情が「泣き」「笑い」「怒り」といった顔の表現でなされているのかもしれません。
ひな人形の飾り方、道具は?
七段飾りの場合六段目と七段目には道具を飾りますが、道具にはたくさんの種類があるので飾り場所を迷ってしまいます。
一段ずつみてみましょう。
六段目のお道具
六段目には嫁入り道具を飾ります。
金蒔絵の施された美しいお道具がいっそう雛飾りを豪華にみせてくれます。
・箪笥(たんす)
・長持(ながもち)
衣類や寝具を入れるための容器。
・鋏箱(はさみばこ)
外出用の物入れ。衣類などを運ぶのに使われました。
・表刺袋(うわざしぶくろ)
組緒を縦横にめぐらし表刺縫いにした婚礼の飾り調達。
・火鉢
暖房器具としてだけではなく、お湯を沸かしたりお餅を焼いたりなどにも使われました。
・針箱
裁縫道具一式を納めておく箱
・鏡台
鏡と台が一体化した物。
・茶道具
茶道は武家の娘にはたしなみに近い存在であったようです。
七段目のお道具
七段目にはお輿入れ道具を飾ります。
お輿入れ道具とは嫁の輿を嫁ぎ先へ担ぎ入れるためのお道具のことです。
・御所車(ごしょぐるま)
平安時代から続く乗り物で、牛車や源氏車とも呼ばれる牛にひかせて貴族が使用した車です。
・御駕籠(おかご)
御所車の同じく、移動するときに使用された乗り物。貴族の女性が使用する物で、かごについた棒の両端を人が担いで移動します。
・重箱
食べ物を入れる容器。今ではおせち料理の時に使いますね。
ひな人形の飾り方、地域によって違う?
ひな人形の飾り方をいろいろ見てきましたが、関東と京都で違いがあったりしました。
大きな違いは男雛(お内裏)と女雛(お雛様)の位置
一般的に飾られているのは関東雛と呼ばれているもので、向かって左に男雛が飾られています。
京雛では逆に向かって右に男雛が飾られます。
京雛の飾り位置が違う理由
昔は「左上位」と言って高貴な人が左側に座るという文化がありました。
「天使は南面す」という言葉があり、古くは位の高い人は北に背を向けて、南を向いて座っていました。
南を向いて座ると、「東は左手」「西は右手」となります。
太陽が東(左側)から昇り、西(右側)に沈むという考えから「左上位」という考え方が生まれたらしいです。
京都を中心とした関西でのひな人形の飾り方にはこの文化が残っているのです。
関東雛の位置の理由
「左上位」
なのに関東雛では女雛の右側に男雛が飾られています。
こちらにも理由があります。
これには大正天皇が深く関わっています。
というのは、大正天皇が即位された時の話になります。
昔は京都にあった皇居ですが、明治天皇の時代になって東京にうつります。
そして即位の際、大正天皇は洋装で皇后陛下の右側に立たれたそうです。
これは「右上位」という国際儀礼の考え方が取り入れられるようになったからで、このことから皇居がある東京を中心に全国に広まっていったからだとされています。
三人官女の持ち物
三人官女の持ち物にも違いがあります。
一般的に三人の内、中央は座ってる女性です。
この座っている女性は既婚者で年配者の女官とされていますが、その女性の持ち物が関東雛と京雛で違うのです。
関東雛では盃の乗った「三方(さんぽう)」を持っています。
京雛では「島台(しまだい)」と言って「松竹梅・鶴亀」などをかたどった飾り物の置きものが台に乗っています。
仕丁の持ち物
そして上でも書いたように、仕丁が持つ物も、一般的には「立傘」「沓台」「台傘」で、京雛では「箒」「ちりとり」「熊手」となっています。
こちらも、関東雛では大名行列を模しているのに対して、京雛では御所内の清掃を模しています。
京雛ではやはり京都に都があった時の様子を守っているのかもしれませんね。
ひな人形の飾り方、仕丁や道具についてや地域によって違う飾り方のまとめ
ひな人形の出てくる唯一の庶民、仕丁についての飾り方や持ち物の名前、また六段目、七段目に飾られる道具についても見てきました。
そして地域によってちがう飾り方があることも分かりました。
ご家庭のひな人形は関東雛ですか?京雛ですか?一度ゆっくり眺めたら今までと違う見方もあるかもしれません。
また他のひな人形を見る機会があったら、そちらもゆっくりと見てみられるのもいいでしょう。
ひな人形が来ている服であったり、細かい道具の様子など、新しい発見があるかもしれませんね。
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