旧暦の7月をあらわす『文月』
なぜ『文月』が7月を表わすのか?
名前の意味と由来について、また旧暦での文月が現在のいつ頃になるのか?
などについて解説します。
そして文月以外にもたくさんある7月の異名についてもご紹介します。
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文月の意味と由来について
文月は旧暦の7月を意味します。
「ふみづき」もしくは「ふづき」と読みます。
今では1月、2月と数字で表わしますが、昔は季節感のある名前で月々の名前を呼んでいました。
こういった日本独自の月の名前を『和風月名(わふうげつめい)』と言います。
では7月がどうして『文月(ふみづき)』になったのか?
文月の語源になった説はいくつかあります。
ではその由来を順番に紹介していきましょう!
■文披月(ふみひらきづき)説
七月といえば「七夕」がありますよね。
旧暦でも同じ様に七月には七夕の風習がありました。
今では七夕に短冊に願い事を書いて笹の葉に吊るしますよね?
この風習は江戸時代から始まったとされています。
もっと昔の平安時代の頃は和歌が書かれていました。
その頃は短冊に歌や字を書いて書道の上達を祈った行事だったのです。
「短冊に書いた文(ふみ)を広げて並べて見せる」という風習から
七夕のある7月は『文披月(ふみひらきづき・ふみひろげづき)』と呼ばれるようになります。
この「文披月」が短くなって『文月』となったとする説です。
室町時代の歌集「蔵玉和歌集」の中にある藤原有家の歌にこんなのがあります。
~七夕の 逢ふ夜の空の かげみえて 書きならべたる 文ひろげ月~
意味としては「七夕の夜に彦星と織り姫が逢う夜空に光が見え、書き並べたたくさんの歌を披露する月ですね」といった感じです。
藤原有家は平安時代の後期から鎌倉時代にかけて活躍した人物です。
平安後期にはすでに「文ひろげ月」と呼ばれていたみたいですね。
それだけ昔なら、時代と共に省略されて「ふみづき」となったのにも納得がいきます。
色々ある説の中では一番有力なものです。
■書物を大切にする習慣から説
昔の中国では七夕の日に曲を作ったり害虫を除去する薬を作ったり、本や衣類の虫干しをする習慣がありました。
虫干しというのは衣類や本を箱から出して日光に当て風を通して湿りやカビ、虫などの害を防ぐことです。
七夕の日に天日干しをする習慣があったのです。
やがてこの習慣は日本にも伝わります。
たくさんの本を開いて干したりしていたのでしょう。
“本を干す月”ということから「文を開く月」という意味の「文開く月(ふみひらくつき)」と呼ばれ、それが転じて『文月』になったとする説です。
■農作からきた説
和風月名の由来には農作に関連するものが非常に多いです。
文月の由来にも農作関連の説がいくつかあります。
1つ目は「穂見月」説です。
旧暦の7月は秋の始まりの頃にあたり、収穫の時期で稲の穂もふくらむ時期です。
稲の穂がよく見える月ということで「穂見月(ほみつき)」と呼ばれ、それが転じて『ふみづき』となったとする説です。
2つめは「穂含月」説
稲穂が膨らむ季節であることから「穂含月(ほふみづき)」「含月(ふくみづき)」となり、転じて『ふみづき』となったとする説です。
■お盆のお墓参りから説
旧暦の7月にはお盆があります。
親の墓にお参りする月ということで「親月(ふづき)」と言われていました。
これは江戸時代の辞書『和爾雅(わじが))』にも記述があります。
この親月(ふづき)が転じて「ふみづき」となったとする説です。
しかし、平安時代の和歌の中に既に「文ひろげ月」とあるので、江戸時代の「ふづき」に由来するこの説は少し弱い気もします。
ちなみに、七月の異名には「親月」と書いて「しんげつ・おやづき」と呼ぶものもあります。
旧暦の文月は今のいつ頃?
文月の意味と由来についての【農作から来た説】でもふれましたが、文月は秋の初め頃にあたりました。
今の7月とはずいぶん時期が違います。
これは今と昔で使われている暦(こよみ)が違うことからおこるズレなのです。
現在、みんなが使っている暦は新しいものなので「新暦」といいます。
新暦とは地球が太陽の周りを1周する時間を基準に作られているので「太陽暦」ともいいます。
慣れ親しんでいる1年が365日で4年に一度”うるう年”があるものです。
それに対して、昔使われていた暦を旧暦といいます。
旧暦では月の満ち欠けと太陽の運行を基準にした「太陰太陽暦(たいいんたいようれき)」が使われていました。
月の満ち欠けで一ヶ月となるので一年は354日間しかありませんでした。
現在と比べると11日も少ないのです!
そのために何年か過ぎていくと、少しずつ季節もズレていきます。
そこで32から33ヶ月に一度「うるう月」を足して1年を13ヶ月にすることで調整されていました。
旧暦での文月を現在の太陽暦に置き換えてみると…………。
■7月下旬から9月上旬頃
となります。
当時の文月(7月)は現在の7月下旬から9月上旬頃なのです。
次の章で紹介する「たくさんある7月の異名」の中には7月を「秋に関連する名前」で表現しているものがいくつかあります。
昔は1年を3ヶ月ごとに季節分けをしており、1~3月が春、4~6月が夏、7~9月が秋、10~12月が冬となるので7月は確かに「秋」の初旬です。
しかし、今の7月上旬から9月下旬ということは「夏真っ盛りじゃ……?」とも思えます。
今の7月とは確かに全然違いますが、まだ「秋」といった感じではないですよね。w
■閏月に関して詳しくはこちらから
⇒旧暦の閏月の意味や決め方!二十四節気との関係をわかりやすく解説!
■旧暦と新暦の違いやズレについて詳しくはこちらから
⇒旧暦と新暦の意味とは?違いやズレはなぜ?どうして暦は変わったの?
7月に関連する記事
それではちょっと”ひとやすみ”!
ということで7月に関連のある記事を少しご紹介します。
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もし、興味のある記事があればぜひ覗いてみてくださいね!
7月の異名はこんなにたくさん!
7月を表わす異名は『文月』だけではありません。
各地で色々な呼び名があるのです。
かなりたくさんあるのですが、まずはいくつかの異名の読み方と由来を紹介していきます。
■女郎花月(おみなえしづき・をみなえしづき・おみなめしづき)
「女郎花(おみなえし)」とは夏頃から山野に咲く黄色い花です。
おみな=女 えし=へし(圧)という意味で
美女を圧倒する美しさから名付けられたとする説もある美しい花なのです。
秋の七草の一つにもなっており、旧暦の7月が女郎花が咲く季節にあたることから名付けられました。
■親月(おやづき・しんげつ)
旧暦の7月の中にはお盆の時期が含まれます。
お盆には親のお墓参りをすることから「親月」と言われたのです。
■建申月(けんしんげつ)
「建」という文字は北斗七星の柄を意味しています。
そのあとに続く「申」というのは十二支の「さる」を表しています。
古代の中国では北斗七星の柄の先が真下の北の方角を指すようになる月(11月)を十二支の最初にあたる子(ねずみ)から「建子月」としていました。
そこから順に12月が「建丑月」、そして1月が「建寅月」となります。
そして7月にあたるのが「建申月」となります。
■初秋(しょしゅう・はつあき・はじめのあき)
さきほども紹介しましたが旧暦では7月8月9月が「秋」とされました。
文月にあたる7月は秋の始まる最初の月にあたるので「初秋」と呼ばれたんですね。
どちらかというと夏の終わりの「残暑」っていうイメージですが…。w
■七夕月(たなばたづき)
この字の通り「七夕」がある月という意味になります。
■愛逢月(めであいづき)
こちらも七夕が関連する名前になります。
七夕の夜になると愛し合う織り姫と彦星が逢うことから名付けられました。
なかなかロマンチックな命名ですよね。
■孟秋(もうしゅう)
何度も紹介していますが……旧暦での各季節は
「春:1月2月3月・夏:4月5月6月・秋:7月8月9月・冬:10月11月12月」
と分かれます。
そして各季節の「前半・中・後半」は『孟・仲・季』という文字で表わされました。
これでいくと7月は秋の前半にあたるので「孟秋」となります。
■涼月(りょうげつ)
旧暦の文月は現在の7月下旬から9月上旬にあたります。
後半頃になると暑さも和らいで、風も少し涼しく感じるようになります。
そこから「涼月」と呼ばれたのです。
現在の7月下旬から9月上旬にあてはめて考えると、正直まだ「涼しい」とは言いがたいです。w
しかし、昔の7月は「秋」の初めにあたるんでやっぱり「涼しい」という感覚があったんでしょうね。
■その他の七月『文月』の異名
7月にはまだまだたくさんの異名があります。
名前と読み方だけでも紹介しておきましょう。
■その他の七月『文月』の異名 | |
・相月(あいづき・しょうげつ・そうげつ)
・秋初月(あきそめづき・あきはづき・あきはのづき) ・夷則(いそく) ・歌見月(うたみづき・かみづき) ・槐秋(かいしゅう) ・開秋(かいしゅう) ・瓜月(かげつ) ・瓜時(かじ) ・神月(かみづき) ・享菽(きょうしゅく) ・功月(こうげつ) ・皓月(こうげつ) ・申の月(さるのつき) ・秋初(しゅうしょ) ・秋涼(しゅうりょう) ・首秋(しゅしゅう) ・鶉尾(じゅんび) ・相月(しょうげつ・そうげつ・あいづき) ・商秋(しょうしゅう) ・上秋(じょうしゅう) ・商節(しょうせつ) ・処暑(しょしょ) ・処商(しょしょう) ・申月(しんげつ) ・新秋(しんしゅう) ・新涼(しんりょう) |
・相(そう・ふづき・ふみづき)
・早秋(そうしゅう) ・爽節(そうせつ) ・素秋(そしゅう) ・素商(そしょう) ・袖合月(そであいづき) ・大晋(たいしん) ・窒相(ちっそう) ・肇秋(ちょうしゅう) ・桐月(とうげつ) ・桐秋(とうしゅう) ・七夜月(ななよづき) ・否月(ひげつ) ・賓涼(ひんりょう) ・七月(ふづき) ・文月(ふづき・ふつき・ふんづき) ・書披月(ふみひらづき・ふみひらきづき・ふみひろげづき) ・烹葵(ほうき) ・盆秋(ぼんしゅう) ・愛合月(めであいづき) ・蘭月(らんげつ) ・蘭秋(らんしゅう) ・流火(りゅうか) ・涼天(りょうてん) ・冷月(れいげつ) |
「文月の意味と由来!旧暦ではいつ頃?7月の異名も多数紹介!」のまとめ
『文月』の名前の意味や語源の由来について紹介しました。
「睦月・如月・弥生・卯月……」と続いていく和風月名ですが、全部覚えるのもなかなか大変でしょう。
和風月名の覚え方を簡単な語呂合せの短歌にしてみたので、もし良かったらこちらの記事を参考にしてみてくださいね!
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和風月名を色々と調べておられる方の参考になれば幸いです。