旧暦の6月をあらわす『水無月』
『水無月』の意味と由来について
また旧暦での水無月がいつ頃にあたるのか?
などを解説していきます。
そして『水無月』以外にもまだまだたくさんある6月の異名を紹介していきます。
Table of Contents
水無月の意味と由来について
水無月は旧暦での6月を表わします。
「みなづき」と読みます。
昔の暦では月の名前を数字ではなく季節感のある言葉で表現していました。
他にも「睦月」「如月」などがありますが、こういった日本独自の月の名前を『和風月名(わふうげつめい)』と言います。
ではその和風月名において、なぜ6月が「水無月(みなづき)」と呼ばれるようになったのでしょうか?
これにいはいくつかの説があるので、順に紹介していきます。
■農作からつけられた説
『水無月』という漢字を見てみると「水・無・月」と3つに分けることができます。
想像してみると「水が無い月?」となりますが、むしろ6月は梅雨の時期でたっぷり水があるように思えますよね?
実は『水無月』の「無」という漢字ですがこれは「無い」という意味ではなく、連体助詞の「な」になります。
つまり「○○の○○」といったときに使う「の」の意味になるのです。
なので、『水無月』をそのまま訳すと「水の月」となるんです。
※連体助詞とは体言(名詞・代名詞など)と体言を関係させる助詞のことです。
「水の月」と聞くと、梅雨の時期にもちょうどあてはまるので”なるほど~!”と言いたいところなんですが、そういう訳にもいかないのです。
というのも、旧暦での水無月は今の6月の時期ではないからです。
梅雨が明けた頃の時期だったのです。
つまり、梅雨が明け田んぼに水が引かれる時期だったので、周りを見渡せば「どこの田んぼにもたっぷりと水がある状況」だったのです。
そこから「水の月」ということで、『水無月』となったとする説です。
ちなみに10月の和風月名『神無月』にも、この説と同様に「神がいない月」ではなく、”神を祭る”「神の月」だとする説があります。
■農作からつけられた真逆の説
こちらも農作に由来するとする説ですが、さきほどとは真逆の説になります。
『水無月』という字の通り「水が無い月」が語源になっているとする説です。
水が無くなるとする理由は2つあります。
1つ目は「たくさんの田に水が引かれるために、それ以外の所に水が無くなってしまう」というものです。
田んぼ以外の場所では水が無くなってしまうという状況から名付けられたとする説です。
2つ目は梅雨明けの時期、つまり夏の時期にあたるので「暑さによって水が干上がってしまって水が無くなる」というものです。
現在の夏も猛暑続きでたまらない日がたくさんありますが、昔の夏にもそういった日があったんですね。
万葉集には真夏の日照りにより、なんと”地割れ”ができてしまうというような気候を詠んだ歌もあります。
「六月の 地さへ割けて 照る日にも 我が袖乾めや 君に逢はずして」(作者不詳)
という歌です。
水が涸れ無くなる様子から『水無月』と名付けられたとする説です。
■「みなしつき」説
平安時代後期の歌学書(和歌に関する学問書のこと)『奥義抄(おうぎしょう)』では農事を皆し尽きる(しつきる)ので「みなしつき」となり、それが誤って「みなづき」となったしています。
田植えというメイン作業をし終えた月だから「皆し尽(みなしつき)」……。
ここまでくると軽いダジャレのようにも思えてきますが…。w
またもう一つ、五月に植えた苗が「皆根づいた」から「みなづき」ともあるようです。
■「田水乃月」説
「田水乃月」と書いて「タミノツキ」と詠みます。
文字の通りこちらも農業に関連しますね。このタミノツキが転じて「ミナヅキ」となったとする説です。
■「水悩月」説
こちらは「ミズナヤミヅキ」と読み、これを語源とする説もあります。
水が無くて悩んでいるのか、夏の台風などによっての水害で悩んでいるのかは謎ですが、旧暦の六月は「水に悩まされる月」であったのでしょう。
いくつか説をご紹介しましたが、ほとんどが農作に関する事を由来としています。
それだけ昔の人々の暮らしの中では「農作」は生活に密着し、重要な位置を占めていたということなのですね。
このように和風月名には他にも「農作」を由来とする月があります。
いくつか紹介しておきますので、興味があればご覧下さい。
⇒卯月の意味と由来って?旧暦ではいつ頃?4月その他の異名も紹介
⇒皐月の意味と由来!旧暦ではいつ頃?五月の異名は他にもたくさん!?
⇒葉月の意味と由来!旧暦ではいつ頃?8月の異名は他にもたくさん!
旧暦の水無月は今でいうといつ頃?
【水無月の意味と由来について】の章でもふれましたが旧暦の水無月の時期は現在の6月頃ではありませんでした。
昔と今では暦にズレがあったのです。
というのも、今と昔では使われている暦(こよみ)が違うからなのです。
現在では地球が太陽のまわりを一周する時間を基本にして作られた太陽暦が使われています。
みんなが知っているカレンダー通りの暦で、1年は365日、4年に1度のうるう年があります。
しかし、この太陽暦になったのは1873年(明治6年)とまあまあ最近のことなのです。
それまでは、月の満ち欠けと太陽の運行を組み合わせた「太陰太陽暦(たいいんたいようれき)」が使われていました。
月の満ち欠けで一ヶ月を数えるので1年が354日になり、現在の365日には11日足りませんでした。
354日で毎年進むと少しずつ季節感がズレていきますよね?
ズレていく分を32~33ヶ月に一度「うるう月」を入れて13ヶ月にすることで調整していたのです。
なので、現在と昔の暦では1ヶ月~2ヶ月ほどのズレがあるのです。
旧暦での『水無月』を現在の新暦に変換すると………。
■6月下旬~8月上旬
になります。
およそ1ヶ月~2ヶ月ほど、現在とはズレがあります。
旧暦での6月は今の6月下旬~8月上旬にあたるので、まさしく梅雨明けの時期から、暑さ真っ盛りの夏へと向かう時期なります。
しかし水無月の初旬はまだ「梅雨」だったようにも思えますね。
ただ、初旬が梅雨だったにせよ、梅雨明けから夏へ向かう時期が重なることによって水に悩まされる月であったことには違いはないでしょう。
■閏月の入れ方や仕組みについて詳しくはこちらから
⇒旧暦の閏月の意味や決め方!二十四節気との関係をわかりやすく解説!
■旧暦と新暦の違いやズレについて詳しくはこちらから
⇒旧暦と新暦の意味とは?違いやズレはなぜ?どうして暦は変わったの?
6月に関連する行事や風習について
ちょっとひとやすみ。ww
ここでは6月に関連する行事や風習などを書いた記事を紹介していきます。
興味があればちょっと覗いてみてくださいね!
■暦
⇒夏至の時期の満月 ストロベリームーンで恋愛を叶えるおまじない
■イベント
■自然
⇒ひょうとあられの違いは?降りやすい季節は?雪とみぞれでは?
■植物
6月の異名はこんなにたくさん!
6月の異名は『水無月』以外にもたくさんあります。
ここではいくつかの月の異名と簡単な由来を紹介させていただきます。
■青水無月(あおみなづき)
水無月は旧暦6月を表わす異名ですが、それに「青」がつき”青葉の茂る頃”を表わしています。
■風待ち月(かぜまちづき・かざまちづき)
個人的にはこの表現が気に入っています。
夏になり暑くなってきて、風が待ち遠しい月ということです。
月の名前にこのような表現をするなんて、昔の人たちのセンスは素晴らしいですね。
■季夏(きか)
旧暦での各季節の分け方は
「春:1月2月3月・夏:4月5月6月・秋:7月8月9月・冬:10月11月12月」
となります。
そして各季節の「前半・中・後半」を『孟・仲・季』という文字であらわしました。
これでいくと6月は夏の後半になるので「季夏」となりました。
■建未月(けんびげつ・けんびづき)
「建」という文字は北斗七星の柄を意味しています。
そのあとに続く「未」というのは十二支の「ひつじ」を表しています。
古代の中国では北斗七星の柄の先が真下の北の方角を指すようになる月(11月)を十二支の最初にあたる子(ねずみ)から「建子月」としていました。
そこから順に12月が「建丑月」、そして1月が「建寅月」となります。順番でいくと6月にあたるのが「建未月」になります。
■涼暮月(すずくれづき)
旧暦6月は今でいうと6月下旬~8月上旬になります。
夏の暑さも、日が暮れる頃には涼しくなるということからつけられました。
「涼暮月(すずくれづき)」に”いよいよ”という意味の「弥」がついた「弥涼暮月(いすずくれつき)」や「い涼暮月(いすずくれづき)」というものもあります。
■蝉の羽月(せみのはづき)
蝉の羽は透明で薄いですよね?
旧暦の6月は夏なので、薄くて透けそうな服(着物)を着るようになることから付けられました。
■常夏月(とこなつづき)
ハワイのような名前ですが、「常夏の花」が盛んな月という意味になります。
「なでしこJAPAN」で有名な「なでしこ」の古名が「常夏」です。
夏から秋にかけて咲く花「なでしこ」が盛んになる月ということですね。
■夏越月(なごしのつき)
旧暦の6月と12月の末日には大規模なお祓い(おはらい)がありました。
半年分のケガレを落とし、そのあとの半年の健康と厄除けを祈願する行事で今でも日本各地の神社で行われている伝統行事です。
そのうち6月のお祓いを夏越し祓(なごしのはらえ)といいます。
この「夏越しの祓をする月」から夏越月となりました。
■鳴雷月(なるかみづき)
夏には積乱雲がたくさん出たり、最近ではゲリラ雷雨などもおこります。
また台風が来たりと雷の多い月でもあります。
雷がよく鳴ることからつけられた名前です。
■鳴神月(なるかみづき)
上記のように雷の多い月だったのですが、昔の人々は神さまが「雷」や「稲妻」になって姿を現すと考えていました。
そこで「神」という字があてられて「鳴神月」となりました。
■晩夏(ばんか)
「晩夏」とは夏の終わり頃という意味になります。
旧暦では水無月が夏の終わりの時期にあたるからですね。
■松風月(まつかぜつき)
こちらは『風待ち月』と同様の意味で風が待ち遠しいという意味になります。
漢字の「松」と「待つ」をかけているのです。
■水張月(みづはりづき)
水無月の由来でも解説しましたが、水無月は「田んぼに水を張る時期」にあたります。
それをそのまま表現しているのがこの「水張月」です。
■その他の六月『水無月』の異名
6月にはまだまだたくさんの異名があります。
名前と読み方だけでも紹介しておきましょう。
■その他の六月『水無月』の異名 | |
・葵月(あおいづき)
・永夏(えいか) ・炎陽(えんよう) ・大六月(おおろくがつ) ・温風(温風) ・火老(かろう) ・季月(きげつ) ・窮夏(きゅうか) ・極暑(きょくしょ・こくしょ) ・庚伏(こうふく) ・亢陽(こうよう) ・極暑月(こくしょげつ) ・涸月(こげつ) ・朔月(さくげつ) ・三伏之秋(さんぷくのあき) ・終夏(しゅうか) ・鶉火(じゅんか) ・常夏(じょうか・とこなつ) ・焦月(しょうげつ) ・小暑(しょうしょ) ・溽暑(じょくしょ) ・且(しょ・みなづき・みなつき) ・暑劇(しょげき) ・且月(しょげつ・みなづき・みなつき) ・水月(すいげつ) ・積夏(せきか) ・則旦(そくたん) |
・徂暑(そしょ)
・祖暑(そしょ) ・大夏(たいか) ・田無月(たなしづき) ・旦月(たんげつ) ・長夏(ちょうか) ・長列(ちょうれつ) ・遯月(とんげつ) ・熱月(ねつげつ) ・波達羅盈月(はだらえづき) ・林鐘(はやしのかね・りんしょう) ・晩月(ばんげつ) ・未月(びげつ) ・未の月(ひつじのつき) ・伏月(ふくげつ) ・伏暑(ふくしょ) ・暮夏(ぼか) ・末夏(まつか) ・末月(まつげつ) ・六月(みなづき・みなつき) ・皆無月(みなづき・みなつき) ・皆尽月(みなづき・みなつき) ・皆月(みなづき・みなつき) ・皆熱月(みなづき・みなつき) ・盛熱(みなづき・みなつき) ・葉月(ようげつ) ・陽氷(ようひょう) |
「水無月の意味と由来!旧暦ではいつ頃?6月の異名は他にもたくさん!」まとめ
『水無月』についての意味や由来を紹介しました。
「睦月・如月・弥生……」と続く和風月名ですが、なかなか覚えにくいものです。
そこで和風月名の覚え方を簡単な語呂合せの短歌にしてみました。
こちらの記事で紹介していますので良ければぜひ覧下さいね!
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