昔の暦での5月を表わす『皐月』
『皐月』のもつ意味や由来について紹介していきます。
またこの旧暦の『皐月』は今の5月とは時期も違います。
今でいうといつ頃なのか?
についてもお伝えしていきましょう。
そして五月の異名は『皐月』以外にもたくさんあります。
そちらも含めてご紹介していきますね!
Table of Contents
皐月の意味と由来について
『皐月』は「さつき」と読みます。
旧暦での5月を意味します。
今でも「五月」と書いて「さつき」と読みますよね。
ではなぜ五月が『皐月(さつき)』と呼ばれるようになったのでしょうか?
それにはいくつかの説があります。
■田植え説
昔から日本ではお米を作ることが生活の上で重要なことでした。
旧暦の5月は「田植えをする月」にあたります。
種を苗代田(なわしろだ)で育てて、12~15㎝ほどに成長した稲の苗(なえ)を田んぼに植えていくのです。
この田んぼに移植する作業のことを「田植え」と言います。
そして、この苗代から田んぼへ移すころの稲の若い苗のことを『早苗(さなえ)』といいます。
これらのことから「早苗月(さなへつき)」と呼ばれるようになりました。
そしてそれらが時代を経て省略されて「早月(さつき)」となったとする説です。
五月を表わす異名の中には「早月(さつき)」というものもあります。
■古語の「さ」説
今では普段使われない、昔に使われた言葉を「古語(こご)」と言います。
古語で「さ」という文字には”耕作”という意味があるとも言われています。
耕作(田を作る)する月ということから「さつき」となったとする説です。
ちなみにさきほど出てきた「早苗」の「さ」という文字もこれが語源とも言われています。
■さつきの花説
旧暦の五月頃に咲く「さつきの花」が由来とするものです。
さつきとは白・赤・ピンクや紫・緑といった様々な色に花を咲かせるツツジ科ツツジ属の植物です。
しかし、どちらかというと花から由来するのではなくて、旧暦の五月頃に咲く花だったために、この花の名前を『皐月』とした、と考えるほうが有力です。
皐月の歴史について
奈良時代に成立した日本最古の歴史書「日本書紀」に「さつき」という言葉は出てきます。
ただし「日本書紀」では『五月』と書いて「さつき」になっているのです。
『皐月』という文字になったのはそれよりも後になります。
しかし、奈良時代よりも古い、『爾雅(じが)』という中国最古の辞典によると12ヶ月を「陬如寎余皋且相壯玄陽辜涂」と呼んでいたそうです。
ここで既に『皐』という文字の元になる「皋」が使われていたのです。
皐月の「皐」について
皐月の「皐」という漢字ですが「コウ・サワ・サツキ」という読み方があります。
「皐」という文字には「神に捧げる稲」という意味があります。
ここから「さつき」という言葉の「さ」の漢字として使われていったとも言われています。
和風月名について
「皐月」のような月の名前は各月にあります。
1月から順に「睦月、如月、弥生……」と続いていくのを聞いたことがあるかと思います。
このような日本独自の月の名前を『和風月名(わふうげつめい)』と呼びます。
昔の人たちは月の名前を単なる数字ではなく季節感のある名前で呼んでいたんですね。
ちなみに和風月名の由来には農作に由来するものが非常に多いのが特徴です。
それだけ昔の人々の暮らしに農作が密接に関わっていたということでしょう。
『皐月』以外の月についていくつか紹介しておくのでよければご覧下さい。
⇒卯月の意味と由来って?旧暦ではいつ頃?4月その他の異名も紹介
⇒水無月の意味と由来!旧暦ではいつ頃?6月の異名は他にもたくさん!
⇒葉月の意味と由来!旧暦ではいつ頃?8月の異名は他にもたくさん!
旧暦の皐月は今でいうといつ頃?
『皐月』の意味と由来のところでもふれましたが、皐月とは田植えの時期に由来するとされています。
つまり現在の五月とは時期が少しズレますよね。
だいたい1ヶ月~2ヶ月ほどのズレがあります。
というのも、皐月と呼ばれていた旧暦と今現在の新暦では使われている暦が違うからです。
1873年(明治6年)に現在の新暦(太陽暦)が使われるようになりました。
それまでの人たちは旧暦(太陰太陽暦)を使っていたためにこのズレがおこるのです。
約150年前までは月の名前を数字ではなく、季節感のある言葉で表現していたんですね!
とても情緒豊かに思えますね。
旧暦の皐月は今ではいつ頃?
・新暦=太陽暦(太陽の運行を基準とした暦法)
・旧暦=太陰太陽暦(月の満ち欠けと太陽の運行を組み合わせた暦法)
太陽暦とは現在みなさんが日頃使っている暦です。
カレンダー通りで慣れ親しんだものです。
旧暦は太陰太陽暦(たいいんたいようれき)と呼ばれ、月の満ち欠けと太陽の運行を組み合わせたものになります。
旧暦の太陰太陽暦では月の満ち欠けによって1ヶ月を決めるために1年は354日になり、現在よりも短かかったのです。
今では1年が365日で4年に1度のうるう年がありますが、旧暦では32~33ヶ月に1度の「うるう月」を入れて調節していました。
では、その旧暦での皐月を現在の新暦に置き換えるといつ頃になるかというと………。
■五月下旬~七月上旬頃
にあたります。
「田植えの時期」ともあいますね!
「皐月=5月下旬~7月上旬」
となります。
■閏月の入れ方や仕組みに関して詳しくはこちらから
⇒旧暦の閏月の意味や決め方!二十四節気との関係をわかりやすく解説!
■旧暦と新暦の違いやズレについて詳しくはこちらから
⇒旧暦と新暦の意味とは?違いやズレはなぜ?どうして暦は変わったの?
五月晴れと五月雨について
「五月」という文字の着いた表現に「五月晴れ(さつきばれ)」や「五月雨(さみだれ)」などがあります。
「五月晴れ(さつきばれ)」というのは「梅雨」の時期に見られる晴れ間の事を意味します。
旧暦の五月が今でいう梅雨の時期にあたるために、その様に呼ばれたのです。
同じく「五月雨(さみだれ)」というのも「梅雨」のことを意味しますが、こちらも旧暦の五月が今でいう梅雨の時期にあたるために「五月の雨」として表現されたんですね。
昔の呼び名が、現在も引き継がれているのです。
現在の五月に使う言葉ではないので使い方に注意しましょうね!
ちなみに五月晴れを「ごがつばれ」と読んでしまうと意味が変わり、新暦(今の暦)での”5月の晴れ”という意味になってしまいます。
しかし、五月中頃に晴れの日が続くときにも「さつきばれ」と読まれることもあります。
間違った使い方が一般的に広まって、時代とともに言葉の意味も変わっていってしまうのかもしれませんね……。
5月に関する行事や風習について
ちょっとここでひとやすみ。
「ゴールデンウィーク」や「こどもの日」「母の日」など、5月に関連する行事や風習についての記事をいくつか紹介します。
興味あるものがあればちょっと覗いて見て下さいね!
⇒ゴールデンウィークの名前の由来|祝日の名前とNHKでの言い方
⇒母の日の意味と由来について|カーネーションは色によって変わる?
⇒こどもの日の由来や意味は?こいのぼりでは?またその歴史について
5月の異名は他にもたくさん!
5月を表わす名前は『皐月』以外にもたくさんあります。
いくつか紹介していきましょう。
■菖蒲月(あやめつき・しょうぶつき)
文字通り菖蒲の花が咲く季節ということから名付けられました。
ここで疑問なのは「菖蒲」というのがどの花のことを指すのかです。
というのも、アヤメ科の「ハナショウブ」と「ショウブ」はよく混同されるのですが全く別の植物になります。
端午の節句にショウブ湯として用いられるのはショウブ目・ショウブ科・ショウブ属の「ショウブ」です。
そちらのショウブの花は5月から7月頃に咲くのでこの「ショウブ」の可能性が高いです。
しかし、アヤメ科の「ハナショウブ」も6月頃に花を咲かせるのです。
ちなみに、一般的に「あやめ」として思いつくのが青紫色の花を咲かせるアヤメ科アヤメ属の多年草の「あやめ」ですが、そちらは5月上旬から中旬に咲くのでこちらは微妙かもしれません。
■稲苗月(いななえづき)
こちらも『皐月』の語源と同様に「田植の時期にあたる月」ということに由来します。
■雨月(うづき、うげつ)
旧暦の五月は今の5月下旬から7月上旬ごろにあたると紹介しましたが、まさしく梅雨まっさかりの時期になりますよね。
梅雨になり、雨の多い月だったことから雨月と呼ばれたのです。
4月の異名が「卯月(うづき)」なので「雨月(うづき)」と読むと少しややこしくなりますね。w
■建午月(けんごげつ)
「建」という文字は北斗七星の柄を意味しています。
そのあとに続く「午」というのは十二支の「うま」を表しています。
古代の中国では北斗七星の柄の先が真下の北の方角を指すようになる月(11月)を十二支の最初にあたる子(ねずみ)から「建子月」としていました。
そこから順に12月が「建丑月」、そして1月が「建寅月」となり順番に行くと5月にあたるのが「建午月」になります。
■五月雨月(さみだれつき)
文字通り「五月雨」の様子を表わした名前ですね。
■田草月(たくさづき)
こちらも「田植えの時期」にあたることからつけられました。
■橘月(たちばなづき)
橘というのはみかんなどの柑橘の木のことです。
歴史も古く、室町時代の歌集の中でも
「たか代より 橘月の名をとめて しのふ昔の 思ひ添うらむ」
と藤原家隆が詠んでいます。
橘という花には「神が現われ農作を始まりを告げる聖なる花」という意味があると言われています。
昔の人々はこの橘の花が咲くのを見て農事を開始したといわれています。
■仲夏(ちゅうか)
旧暦では各季節の分け方が
「春:1月2月3月・夏:4月5月6月・秋:7月8月9月・冬:10月11月12月」
となります。
そして各季節の「前半・中・後半」を『孟・仲・季』という文字であらわしました。
夏の真ん中なので「仲夏」となりました。
■月不見月(つきみずづき)
漢字から考えると「月が見えない月」となりますよね?
旧暦の皐月は梅雨の時期になるために月が見えないことが多いのでこのように名付けられました。
昔の人たちはこういった情緒豊かな名付けかたが本当に上手に思います。
■その他の5月『皐月』の異名
5月には皐月以外にもまだまだたくさんの異名があります。
名前と読み方だけになりますが紹介しておきましょう。
■その他の5月『皐月』の異名 | |
・畏景(いけい)
・五色月(いろいろづき) ・鶉月(うずらづき・じゅんげつ) ・午の月(うまのつき) ・梅月(うめづき・ばいげつ) ・梅色月(うめのいろづき) ・炎夏(えんか) ・炎景(えんけい) ・炎節(えんせつ) ・炎天(えんてん) ・開明(かいめい) ・夏五(かご) ・夏半(かはん) ・啓月(けいげつ) ・景風(けいふう) ・啓明(けいめい) ・皐(こう) ・皐月(こうげつ) ・姤月(こうげつ) ・午月(ごげつ) ・早稲月(さいねづき) ・狭雲月(さくもづき) ・皐(さつき) ・五月(さつき) ・早月(さつき) ・早苗取月(さなえとりづき) ・早女房(さにょうぼう) ・賤男染月(しずおそめづき) ・賤間月(しずまづき) ・写月(しゃげつ) |
・授雲月(じゅうんづき)
・鶉首(じゅんしゅ) ・小形(しょうけい) ・冬形(じょうけい) ・小巧(しょこう) ・蕤賓(すいひん・ずいひん・ぜいひん) ・生夏(せいか) ・星火(せいか) ・星花(せいか) ・星月(せいげつ) ・そうばいの月(そうばいのつき) ・多草月(たぐさづき) ・仲暑(ちゅうしょ) ・超夏(ちょうか) ・長至(ちょうし) ・東井(とうせい) ・仲の夏(なかのなつ) ・中の夏(なかのなつ) ・南訛(なんか) ・梅夏(ばいか) ・梅天(ばいてん) ・吹喜月(ふききづき) ・鳧鐘(ふしょう) ・吹雪月(ふぶきづき) ・芒積(ぼうせき) ・鳴蜩(めいちょう) ・茂林(もりん) ・浴蘭月(よくらんづき) ・榴月(りゅうげつ) ・厲皐(れいこう) |
「皐月の意味と由来!旧暦ではいつ頃?五月の異名は他にもたくさん!?」のまとめ
『皐月』の意味や由来について紹介しました。
「睦月、如月、弥生………」と続く和風月名。
なにげに覚えるのが大変ですよね。
そこで『和風月名』の覚え方を語呂合せで簡単に覚える短歌を作ってみました。
下記の記事で紹介していまうすのでよかったらぜひご覧下さいね!
関連記事
⇒太陰暦の意味をわかりやすく解説!一年の決め方や純粋太陰暦って?
旧暦の月の名前を調べておられる方の参考になれば幸いです。